21016209

人文社会HSS608z 

3年, 4年後学期水5

倫理学と哲学の

Between Ethics and Philosophy

中野 愛理

単位区分

単位数: 2単位
必修
課程・類・プログラム
種別
先端工学基礎課程

関連Webサイト

特にありません。

主題および達成目標

主題:カントの平和構想とそれを支える哲学的世界理解

本授業では、近代を代表する哲学者イマヌエル・カントの平和論である『永遠平和のために』(1795)を読み解き、世界平和のために各国家が国内外に対しいかなる態度を示すべきなのか、そしてなぜそれが有効であると言えるのかを学びます。

カントが生きていた18世紀のヨーロッパは激動の時代でした。カントの祖国プロイセンでは、オーストリア継承戦争 (1740-48)、7年戦争(1756-63)、ポーランド分割(1772-95)など、戦争を通じた領土獲得が長らく試みられていました。他方で、啓蒙専制君主であったフリードリヒ2世のもとで、自由で闊達な議論のできる機会が広がってもいました:「啓蒙とは人間が自ら招いた未成年状態から脱することである。...自分自身の知性を用いる勇気を持て!」(カント「啓蒙とは何か」)しかし、隣国でフランス革命(1789)が勃発し、人権宣言(身分制の撤廃)が叫ばれると、プロイセンは急速に保守化します。1792年にはフランスの君主制を救うためオーストリアと共にピルニッツ宣言を発し、フランス内政に干渉を試みます。その後フランスとの戦争を経て、95年にはフランスとバーゼル講和条約を結びます。

このような領土拡大や他国への内政干渉の絶えない時代背景のなか『永遠平和のために』は書かれました。この本からは、国家というものが世界平和のためにいかなる形態であるべきか、何をなすべきであり、何をなすべきでないかを学ぶことができます。確かに、18世紀末の時事的問題に対するリアクションという側面はありますが、その場凌ぎの提言ではなく、人間本性に関わる鋭い洞察に基づいた普遍的な提言として、現代の私たちにも多く学ぶべき点があります。

さらに、『永遠平和のために』は単なる政治的提言にとどまりません。同書の半部では、カントがこの世界全体をどのように理解し、その中で人間のなすべき仕事とは何であるかを説明しながら、前半で示した政治的提言を正当化します。ここには単なる政治的主張にとどまらない壮大な世界理解の一端が示されており、簡単にではありますが、カント哲学の全体像を垣間見ることができます。

文庫本にしてわずか100ページ程度のパンフレットではありますが、含むところの極めて多い本です。少しずつ紐解きながら、カントの平和構想とそれを支える哲学的世界観を理解してゆきましょう。

達成目標:
・カントによる平和のための国家構想を歴史的・哲学的背景的知識とともに説明できるようになる。
・研究者による解釈を理解し、自分の立場を理由とともに示せるようなる。
・カントによる世界理解を概観できるようになる。

前もって履修しておくべき科目

特にありません。

前もって履修しておくことが望ましい科目

特になし。

教科書等

教科書:イマヌエル・カント 『永遠平和のために』宇都宮芳明訳, 岩波書店, 1985.(638円)

第2回目までに必ず入手してください 。『永遠平和のために』の翻訳は複数ありますが、授業では主にこの版のページ数で課題等を指示しますので必ずこの翻訳を入手してください。Kindle版でもいいですが、紙版のページ数は対応していません。

また、Google Classroom にて資料を掲示しますので毎回確認してください。

購入の必要はありませんが、参考文献として以下を勧めます。
網谷壮介『カントの政治哲学入門』白澤社, 2018.
日本カント協会編, 『カントと二一世紀の平和論』, 人文書院, 2025.
Ertl, Wolfgang. The Guarantee of Perpetual Peace, Cambridge UP, 2020.
Kleingeld, Pauline. “Kantʼs theory of peace." In The Cambridge Companion to Kant and Modern Philosophy, edited by Paul Guyer, Cambridge University Press 2007.

授業内容とその進め方

授業内容:各回以下のテーマに従って進めます。

1. イントロダクション:カントとは誰か?その人生と著作
2. カントの認識論と道徳論;『永遠平和のために』序文
3. カントの法論と徳論;『永遠平和のために』予備条項(1)第1・2条項
4. 社会契約論(1)伝統的な社会契約論;『永遠平和のために』予備条項(2)第3~6条項
5. 社会契約論(2)カントの社会契約論; 『永遠平和のために』第1確定条項
6. 共和主義の理念(1)さまざまな政治制度
7. 共和主義の理念(2)理性の公共的使用;『永遠平和のために』第2確定条項
8. 国際法と世界市民法(1)国際法;『永遠平和のために』第3確定条項
9. 国際法と世界市民法(2)世界市民法;クラインゲルト(1)歴史的文脈
10. クラインゲルト(2)カントの平和論の特徴
11.『永遠平和のために』第1補説(1)平和構想のバックグラウンド
12. 『永遠平和のために』第1補説(2)神の摂理と人間の努力の調和
13. 『永遠平和のために』第2補説
14. 『永遠平和のために』付録
15. まとめ
期末試験

進め方:
資料をもとに講師が説明を行います。毎回、授業内課題として内容に関する簡単な記述問題を課します。また、授業内でわからなかった箇所については課題内の質問欄から積極的に尋ねてください。次回の授業冒頭で講師が全体に向けて応答します。

授業時間外の学習

毎授業の終わりに次回までに行う課題を指示します。予習として、指定された資料を読み、わからない部分に線を引いておくこと。また復習として、教科書及び資料を繰り返し読み、内容理解に努めること。

成績評価方法および評価基準

平常点(リアクション・ペーパー):30%、期末試験:70%

毎回の授業終わりに課題をGoogle Classroomに提出することになります。この提出で出欠を判定し、成績の30%に反映します。著しく内容が少ない、AIによる代筆、白紙の回答などは未提出扱いとします。

期末レポートの評価においては内容理解だけでなく、構成・形式面も重視します。講義内でも書き方について細かく指示を出しますが、参考書に示した本などの入門書を読み、レポートの書き方を予習しておくことが望ましいです。また、締め切りを超過したレポートはどのような理由であれ受け取りませんので、余裕を持って準備してください。

オフィスアワー・授業相談

授業内課題内に質問欄を設けます。または授業の前後に声をかけてください。

学生へのメッセージ

平和とは何かという問題について、社会契約論の潮流にあるカントの思想に触れ、それによって一つの理想型とその理論的根拠を学びましょう。

その

授業中にGoogle Classroom へ課題を提出することになるため、対応可能な端末を持参してください。本講義では課題の作成に生成AIを使用することを禁じます。

キーワード

『永遠平和のために』
カント
平和論
社会契約論
最終変更日時: 2026/03/10 11:15:06